私が呼びかけて人を務めている「次世代産業ナビゲーターズフォーラム」では、二十一世紀の新しいビジネスのかたちをさぐる勉強会を年に10回ほど開催しています。毎回テーマを掲げ、企業経営から生命科学や芸術の分野まで、幅広いジャンルのトップを走っておられる方々を講師に招いて、セミナーや討論会を行っています。
参加メンバーは、企業の経営トップの方を中心に、学者、ジャーナリスト、作家、建築家、作曲家など各界で活躍されている方々にも声をかけさせていただいています。この活動は、もともと私がマスコミや自治体の参与として携わってきた仕事を通じて、「新しい産業と社会や文化を考えていくために、企業や業種の垣根を越えた経営者同士の交流の必要性」を強く感じたことから始めたものです。幸い、多くの会員の方に支えられて、ことしで五年目を迎えることができました。
聞くだけではなく積極的に議論に参加する
こうした経営者や各界の第一人者を招いてのフォーラムを主宰してきた経験から、社外勉強会へ参加する際の心構えについて私なりに考えてみますと、「受身」の姿勢だけではダメ、ということに尽きると思います。
これは多くの勉強会で行われている一般的なスタイルだと思いますが、当フォーラムでも、講師の方にレクチャーをいていただいた後に、参加者を交えた質疑応答やディスカッションを行なう、という形式をとっています。
そうしたなかでいつも感心させられることは、どなたもご自分の専門分野以外のテーマに対しても、好奇心や興味を抱き、熱心に議論に参加されている、ということです。
皆さん、日頃、オフィスや業界のなかだけでは決して得られない幅広いジャンルやテーマの話題から、大いに知的な刺激を受けていらっしゃるのではないでしょうか。これは異業種の方が集まる勉強会の大きな魅力のひとつだといえると思います。
たとえば、免疫学の分野で有名な生命科学者・多田富雄先生をお招きしたときなどは、まったく畑違いの経営者から、「生命活動における免疫の働きを、企業の活動になぞらえて考えると、類似した部分が多いのではないでしょうか?」といったユニークな視点の質問が相次いで飛び出すなど、熱意に満ちたやりとりが交わされていました。
前述のように、当フォーラムの参加者はみな各界のエキスパートやトップランナーばかり。そういう一流の方々は、自分の不得手な、あるいはあまり興味のないテーマだからといって、ただ聞き手に甘んじているようなことはありません。むしろ専門外のテーマこそ楽しんでおられる様子が見受けられます。そうした参加者の態度や考え方は、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
参加者を厳選し”質”を保った会を選ぶ
当フォーラムでは、なにより参加されるメンバー相互の信頼関係を大事にしていきたいと考えています。そのため、基本的にどなたでも参加できるわけではありません。
著名な経営者や文化人の方々がメンバーにおられるせいか、ときどきメディアにとりあげられることがあると、「是非、フォーラムに参加させて欲しい」「入会する条件は?入会金はいくら?」といったお問い合わせをいただくことがあります。
そういうときはまず、その参加志望者のプロフィールを送っていただき、そして直接お会いして、当フォーラムの趣旨や理念を正しく理解して賛同していただけるかどうか、また現在のメンバーの方々と上手にコミュニケーションをとれていけそうか、を考慮させていただくことにしています。
単に「得たい情報だけをもっていきたい」「商売の種をなんでもいいからつかみたい」「有名経営者と知り合って、あわよくばビジネスチャンスにしたい」というような目的で参加しようという方には、申し訳ありませんが、お引き取りを願っているのです。
というのは、私どものような勉強会では、「自分にとって有益な情報だけをもって帰り、自分からは何も発しようとしない」人が参加してしまうと、その人はよくても、ほかの参加者には何も有益なことがもたらされなくなってしまいます。
それでは、会自体の"質"の低下につながり、ひいては心ある方も会から足が遠のいてしまうでしょう。そういうことになっては困りますから、参加されるメンバーを厳選させていただいているのです。これが、会を主宰する者としてもっとも大事な仕事ではないかとさえ考えています。
これは、なにも当フォーラムに限ったことではないはずです。ある程度メンバーが固定した勉強会・交流会を維持し、継続的に運営をしていくうえで、もっとも大切なのは、メンバーを厳選することなのです。その前提がないと、メンバーが安心して会に参加して、相互に信頼関係を築いていくことができなくなるからです。
信頼によるつながりが人や情報の出会いを生む
ですから、これから社外の勉強会などに参加される際には、まず主宰者がしっかりしているかどうかを見極めることが何より大切です。連絡先やこれまでの活動についての情報がきちんとオープンにされていることはもちろんです。すでに参加されている方から直接お話を聞くことができればなおよいでしょう。その意味で安心できるのは、親しくて信頼できる経営者仲間から会を紹介してもらう方法ではないでしょうか。
逆に誰でもオープンに門戸を開いているような会では、知りたい情報を得るだけならよいですが、参加者同士で互いに意見を闘わせるような密度の濃いコミュニケーションを求めるのは難しいと思います。継続的に充実した活動を行なっている勉強会であれば、むやみやたらに参加者を増やそうとして声をかけるということはないのではないでしょうか。
自己研鑚にはげみたい経営者の方には、ぜひご自分ですばらしい勉強会を見つけて、積極的に関わっていただきたいと思います。
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